2019年東大入試世界史の分析

東大入試分析シリーズ。今回は東大の世界史の分析をしてみたいと思います。大論述が存在するため重く考えている人も多いかもしれませんが今年の世界史はどんな感じだったのでしょうか。

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大問1…大論述(オスマン帝国の解体)

18世紀半ばから1920年代のオスマン帝国解体過程について指定語句を使いながら述べる大論述が出題されました。大論述は歴史のタテかヨコのどちらかに焦点を当ててくる場合が多いですが今年はタテでした。該当する時代も200年以下で地域もオスマン帝国限定なので結構深く問われています。相次ぐ敗戦による領土喪失以外にも問題で指定されている帝国内の民族運動・帝国維持の動きに注目しながら記述できるかで出来を分けそう。また時代について18世紀半ばからという指定があるのでオスマン衰退で誰もが思い浮かべそうなカルロヴィッツ条約を書いてはいけないという罠も仕組まれています。

字数という点で大きな変動があり、なんと20行(600字)ではなく22行(660字)以内の指定でした。近年は600字以内で安定していた東大世界史で字数がさらに増加したため受験生にとっては負担も大きかったと思われます。150分で2教科という試験時間の制約上これよりもさらに字数を増加させるのは難しそうですが来年以降どうなるかは注目したいところです。

問われている内容もややレベルが高く、字数も60字増加したため、大問1は難しい問題だったと思います。

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大問2…論述(国家と境界線)

(1)はベンガル分割令の分割方法と目的を記述する問題で簡単。(2a)はミクロネシア・南洋諸島の変遷について問う問題。日本が絡む問題なので日本史選択者にはやや有利な問題かなと思いました。とはいえ世界史でもやる内容なので解けてほしい問題でもあります。(2b)は大英帝国からイギリス連邦の成立について論述すればいい問題ですが、題材をニュージーランドにするあたり少しいじわるな問題。カナダならわかりやすかったかもしれません。(3a)はやや難問。書く内容自体は思いつきそうだが、2行しかない割に対象が4~7世紀の韓国・満州地方の政治状況という大雑把な指定。問題文の要求をコンパクトにまとめた論述をするのは苦労しそうな問題です。(3b)は唐が渤海に与えた影響を述べる問題で標準的な難易度。

(2)や(3)では問い方が少しわかりにくいような問題も見られましたが全体的に問題そのものは標準的な題材という印象です。

大問3…短答

例年通り短答問題でした。しかし10問中3問は単語を2つ解答しなければならない問題。標準的な単語も多いですが大問5のドニエプル川、問10の北部のニューイングランド植民地を聞く問題は若干難しめか。これに加え、エリュトゥラー海案内記あたりも間違えた受験生はいるかもしれません。

理想は全問正解ですが2019年の状況を見ると1問ミスくらいなら許容範囲かなぁという感じですね。

全体分析と感想

全体的な難易度としては大問1の字数が増加したこともあり、やや難しいレベルだと思います。大問2、3でも差が付きそうな問題があり、中途半端な実力ではなかなか歯が立たない問題だったと思います。ただし難攻不落というわけでもないので世界史が得意という人はうまく他の受験者と差がつけられたと思います。基本的な知識に加え論述対策をしっかりしてきたかどうかが重要です。

ただし、今年は日本史が大幅に易化したので日本史・世界史で結構点差がついてしまいそうなのは気になりますね。地理は選択していなかったので何とも言えませんが、選択した科目によって点差が大きく出てしまうことはあまり望ましくないと思います。

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