平成の東大入試(世界史)難問ランキング10位~6位

コラム

平成の東大入試難問ランキングの世界史編です。対象期間は平成の間(1989~2019)とします。世界史編では大問1の大論述のみを集計対象とします。大問2や大問3で難しい問題が一切出ないとは言いませんが、やはり東大世界史というと大問1が花形と言えると思うので。

問題は中谷臣氏の「世界史教室」を参照しました。中谷氏のサイトには1970年までの過去問が載っています。

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第10位…1991年・10世紀~17世紀の政治体制の変化

まず西アジアを中心にして10世紀から17世紀のイスラム世界の政治体制の変化を述べ、次いで対比しながら同時代の西ヨーロッパ、南アジア政治体制の変化を20行(600字)以内で述べる問題。

東大にしては珍しく解答の順序や内容を細かく指定してくれている問題。親切な易問かと思いきやそんなことはなく結構難しい問題です。政治体制の変化を箇条書きするだけならランクインすることはなかったかもしれませんが、それを対比しながら論述するのは面倒です。特に南アジアについては対策が十分まわっていない学生もいるかもしれないので答案にうまく含めるのは相当な力が必要だと思います。

変化や比較は東大に限らずよく見る問題ですが、意外と難しい論述内容であることがよくわかります。

第9位…1997年・第一次世界大戦前後の帝国の解体

第一次世界大戦前後の帝国解体の経過とその後の状況について、解体過程の相違に留意しながら15行(450字)以内で述べる問題。

平成最後入試のオスマン解体の問題は字数が22行(660字)でした。しかしこちらは清、ドイツ、ロシア、オスマン、オーストリアと思い浮かぶ帝国はなんと5か国もあります。そのくせ字数は450字と東大の中でもきわめて短く、何を書くのかうまく取捨選択しなければいけません。5か国すべてに触れながら解体後の状況や過程の相違点に触れる答案を書くのは難しい…というか受験生には高すぎる要求です。

テーマがオーソドックスなため多少の部分点を得ることは難しくないかもしれないので順位は控えめにしました。しかし高得点を本気で狙うとなると骨が折れる問題なのは間違いありません。

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第8位…2007年・11~19世紀の農業史

11~19世紀の農業生産の変化とその意義を17行(510字)以内で述べる問題。

東大ではたまに出る経済史関連の第論述です。あくまでも農業生産の変化と意義が聞かれているので話の軸がずれて農業史から政治史や文化交流にそれないように注意する必要があります。難しい点は510字という字数の割には対象とする時代が長く、しかも変化と意義が聞かれているという点です。変化を書く際には原則、変化の前と後を書く必要があるので字数を圧迫しがちです。とくに変化の前は書き忘れます(というか私がやっていました)し、意外と注目されないことが多いので気を付けたいです。意義についても思い浮かびにくいです。書くとしたら人口増加やそれに伴う移民、労働力増加、経済発展などでしょうか。

この問題は書けたと思っても指定語句の羅列で終わってしまいがちなタイプだと思います。

第7位…2002年・19~20世紀初めの中国からの移民

19世紀~20世紀はじめで南北アメリカや東南アジアで中国人移民が急増した背景にある事情と中国人移民が中国本国に与えた政治的影響を15行(450字)以内で述べる問題。

政治的影響については割と考えやすく、指定語句である孫文がある程度の方針を与えてくれると思います。注意しなければならないのは孫文の政治運動の説明にならないようにすることです。しかし移民急増の背景にある事情はやや難しい印象です。とくに指定語句以外の要素をどれくらい持ってこられるかで受験生の出来を左右しそうです。解答の対象になる年数は100年以下ですが時数は450字と短く、ダラダラ説明することはできない点も難しい点です。

指定語句の説明をするだけなら簡単そうに見える問題ですが、題意をみたし、指定語句以外単語も組み込み論述していくのは難しいと言える問題です。

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第6位…2012年・植民地の独立

アジア・アフリカの植民地独立過程とその後の動向を地域ごとの差異を考えながら18行(540字)以内で述べる問題。

難しいポイントとしては3つ。1つ目は書く内容が豊富にありすぎる点です。イギリス。フランス以外にもオランダ、ベルギー、イタリア、ポルトガル、そしてわずかながらスペインがこれらの地域に植民地を持っていました。指定語句的にはイギリス・フランスがメインになりそうですが、他国をどこまで書くかは意見が分かれそうです。2つ目は差異に注目するのが難しいことです。独立時に戦争になったかどうか、旧宗主国、社会主義政権かどうか宗教は何かといった軸がありそうですが、うまくかける自信はとてもじゃないですがありません。3つ目は指定語句の宗教的標章法の使い方がピンとこないところです。これだけ2004年の出来事なので答案に絡めにくい気がします。

字数不足で失格になる答案はまずありえないでしょうが、要求にこたえるのは至難の業です。

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