(声優)天才、桐谷華を出演作品とともに振り返る(全盛期編)

前回に続き、桐谷華(沢澤砂羽)を振り返るシリーズ。今回は人気声優としての地位を確立した彼女の全盛期を考える。なお彼女の全盛期は長く、例によってすべての出演作品に触れることはできないので独断と偏見で選ばせてもらう。「なんでこの作品がないんだよ!」という方、ごめんなさい。

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2012年ー怒涛のAlcot連投

『はつゆきさくら』以降、人気声優の仲間入りを果たした桐谷華さん(以下敬称略)は2012年2月以後は5月を除き毎月何らかの作品に出演している。

まず特筆すべきは3月発売の『乙女が紡ぐ恋のキャンバス 』であろう。ensembleの十八番、女装主人公モノである。どう見ても女性にしか見えないが女装少年役を経験し「こんな役もできるのね」と思わせた。まぁ演技うますぎるからこのあと何回も思うことになるのだが。なおこの作品は2019年末に何を血迷ったか歴代女装主人公を結集させたファンディスクを発売している。結果的に晩期桐谷華の貴重な供給源になるとは当時は誰も思わなかったであろう。

そして最も注目すべきはAlcotの作品である。駄妹で味を占めたAlcotは姉妹ブランド含めこの年なんと3本も桐谷華を起用している。しかも3作品すべてメイン級である。Alcotはお気に入り声優を連投する傾向が強い印象があるが1年に3作品はかなり極端である。前年の駄妹と言い桐谷華出世の立役者と言え、全盛期の桐谷華の起用が最もうまかったブランドだと思う。この年はその他にもWhirlpoolの作品に2作品出演している。

なお1月からTwitterを開設している。エビフライの画像を設定するあたりに彼女の独特なセンスが現れている。ただしTwitterはブログの更新頻度激減と引き換えであったようだ。ブログは現在閉鎖されている。

この年(2月の作品含む)の出演総数は24本。うちメインは12本。メイン率50パーセントですべて桐谷名義である。

2013年ー大図書館と初ラジオとゆずソフトの連投開始

1月にはオーガストから『大図書館の羊飼い』が発売される。センターヒロインではないものの物語のキーパーソンと言えるメインヒロイン小太刀凪を演じた。アニメ化もされ全盛期の桐谷のなかでも屈指の知名度をほこるキャラであるといえよう。アニメ版の声優は桐谷華じゃないんだけどね

忘れてはいけないのは2月発売のClochette『プリズム◇リコレクション! 』である。作品自体は賛否両論であるが、注目すべきはこのゲームの番宣ラジオ『☆☆☆ラジオ』である(ラジオ配信自体は2012年から行われていた)。ベテランで同じ時代に全盛期を迎えていた夏野こおりと2人で初メインラジオを担当するのだが、普段の演技力がウソであるかのようにガッチガチに緊張していた。「この人、演技力は神なのにラジオはこんなポンコツなのか」と思わなかった人はいないであろう。夏野こおり曰く緊張すると親指を握りしめる癖があるらしい。意外な一面が見られた作品である。

そして桐谷華の記念すべき初ゆずソフトが7月に発売した『天色*アイルノーツ 』である。桐谷・沢澤というとゆずソフトという印象が強いが意外なことにこれが初めてである。『ドラクリオット』には出演していない。『アイルノーツ』の真咲・ガイヤールの「わふ」という口癖はこれほどかわいいものがあろうかという破壊力。

この年の桐谷華は極めて当たり役・印象に残る役が多かった。上記以外も名作と名高い『ChuSinGura46+1』や手堅い萌えゲー『LOVESICK PUPPIES』、後にノラととを生み出すことになるHARUKAZEの『らぶおぶ恋愛皇帝』、サブキャラだが作品の知名度は高い『ものべの』などに出演。

この年の総出演数は26本。うちメインは20本。メイン率は76パーセントであった。全盛期の中でも最も輝いていた年と言っても過言ではない。

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2014年ーサブからメインまで幅広く活躍

この年は印象的な作品という点では2013年には劣る。しかし演技力の高さゆえに早くもベテランの貫録が出てきたのかサブからメインまで便利屋のごとく出演していた。

まずは3月発売のAlcot『Clover Day’s』である。鷹倉杏鈴は『ポコポコ』の駄妹に勝るとも劣らない桐谷製妹と評される。しかし意外なことに桐谷華はAlcot系列では2016年発売の本作FDを除いて最後の出演となる(つまり完全新作としては本作が最後)。沢澤名義でも出演していない。ぶっちゃけ調べるまで気が付かなかった…。

その他この年の当たり役は7月同日に発売されたtone work’s『星織ユメミライ』逢坂そら役とFAVORITE『アストラエアの白き永遠 』夕凪一夏役であろうか。本数的には大幅に落ち込んだわけではないが、『蒼の彼方のフォーリズム』や『なないろリンカネーション』といった作品には出演していない。メイン役ではやや影が薄かった年と言えるかもしれない。

一方でサブキャラまで視野を広げると当時つり乙シリーズを酷使していたNavelの『月に寄りそう乙女の作法2 』、和泉つばす原画のぱれっと『恋がさくころ桜どき 』に出演。いぶし銀の活躍を見せた。

しかしこの年10月以降本人のTwitterが事実上更新停止状態となる。日常のつぶやきはもちろん、出演作品の宣伝すら2016年に突然『ノラとと』関連のツイートをリツイートしたのみでそれ以外は全くなくなっている。

総出演本数は23本。メインは14本。メイン率61パーセントである。

~2015年2月27日ーサノバウィッチ出演。そして沢澤へ。

2015年は桐谷史上屈指の当たり役が到来する。2月27日ゆずソフトより発売された『サノバウィッチ』の綾地寧々である。このブログに書くことがためらわれるような強烈な個性を持ったキャラである一方、ゆずソフトで最もシナリオがいいとも言われる愛すべきキャラクターとなった。『サノバ』は桐谷以外も小鳥居夕花、遥そらといった有力ブランド次世代のヒロインを担当する声優が出演しており美少女ゲーム声優史を象徴するようなゲームである(2人ともデビュー自体は桐谷とそれほど変わらないが)。

しかしこの年、桐谷華が所属していた事務所トリトリオフィスがトリアスと合併しパワーライズに変更されるが、その過程で桐谷華も事務所を移籍したとされる。その影響からかこの年以降は桐谷名義が激減し、沢澤砂羽名義が増え始める。折しも沢澤名義が初登場するのは桐谷の代表作『サノバ』と同日発売の『ぼくの一人戦争』であった。

ゆえに2015年2月27日までを全盛期桐谷華とし、沢澤名義が使用され始めるこれ以後を後期桐谷華(沢澤)とする。

まとめー全盛期桐谷華の凄さ

ここまで振り返ってみると全盛期桐谷華のすごさは出演作品がほぼすべて大手・中堅ブランドの作品であることである。確かに本数だけならもっと上がいるが、彼女はマイナーブランドのロープライス作品には一切出演していない。本数以上の知名度があると言える。

またAlcotやゆずソフトはじめ特定ブランドの連投が多いことも挙げられる。美少女ゲームでは特定ブランドの連投は珍しくはないが、彼女は連投するブランドの数も多かったり、連投回数も3,4回だったりする。名前ありのキャラクターでデビューしてから当時はまだ5年たっておらずかなり酷使されていることが分かる。ファンだけでなく現場からの評価も高かったのであろう。これらの点は彼女の卓越した演技力の賜物である。

一方でここまでメイン率は8割を超えたことはなく、決してメインヒロインばかりを演じていたわけではないこともわかる(極端な例だが夏野こおりはメイン率9割を超えていた年があったらしい。いつかは忘れたけど)。

次回は沢澤砂羽名義が登場した2015年2月以後の後期についてである。

(声優)天才、桐谷華・沢澤砂羽を出演作品で振り返る(後期編)

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